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「秋山善吉工務店」(中山七里)

父を火災で失った母と息子二人。止むを得ず父の実家の工務店に身を寄せるが、昔気質の祖父・善吉が苦手。それでも新生活を始めた三人には、数々の思いがけない出来事が・・・。家族愛と人情味溢れるミステリー。

べらんめえ口調の善吉は孫が悪い友達に誘われそうになった時に言います。

「どんなダチを作るかなんざ本人の勝手だ。親や周囲がとやかく言うこっちゃねぇ。かくいう俺だって、昔からの知り合いは半分が凶状持ちだからな。元よりそんな資格もねぇ。けどな、自分が選んだ限りは筋を通さなきゃいけねえ。ダチが困っていたら、どんな時でも助ける。ダチが正当な理由もなく罵るヤツを許さない。親兄弟に嘘を吐いてもダチには吐かない。そして決して裏切らない。そういうことを全部守れるんだったら、お前が誰をダチに選ぼうが俺は何も言わないし、文句を言うやつには全力で文句を言ってやる」

”昭和の頑固おやじ”そのものです。

本作は確かにミステリー要素もありますが、本格ミステリーを求めているのであれば合致しないかもしれません。

まさにホームドラマな一冊ですね。

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「夜空に泳ぐチェコレートグラミー」(町田そのこ)

「コンビニ兄弟」以来の町田そのこさんの作品。

表題作を含めた5編の連絡短編は登場人物が重なり合っていますが、それぞれの登場人物が生き生きと描かれています。

生きるのが上手ではない人物達が懸命に生きる愛の物語は、「コンビニ兄弟」とは違った「今の日本」の現実なんでしょうね。

読んだ後切なくなる物語です。

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「コロナ黙示録・狂騒録」(海堂尊)

「チーム・バチスタの栄光」シリーズの海堂尊さんが描いたCOVID-19をテーマにした作品で、「コロナ黙示録 2020災厄の襲来」「コロナ狂騒録 2021五輪の饗宴」の2作です。

2019年末からのコロナウイルス発生前から2021年7月までのコロナ禍の日本の対応をフィクションとして描かれています。豪華クルーズ船内での新型コロナウイルスのクラスターの発生など、政府・行政・自治体の対応や医療機関の対応まで、現実とオーバーラップして描かれてもいます。

コロナ対応の渦中での”公文書改ざん問題”、”首相交代問題”、”東京五輪問題”も網羅した本作は、フィクションである事はわかっていながらも、現在の”二ホン”の問題点を洗い出しているような気がしますね。

学術会議の推薦拒否を受けた歴史学者の言葉が心に残ります。

・・・「首相は『責任は痛感する』と言うが、責任は『感じる』ものではなく『取る』ものだ。責任を取らない、無責任で恥知らずな連中が権力を握っているのは残念な事だ。」・・・

・・・「現政府は米国との日米地位協定の改正など微塵も考えず、世界唯一の被爆国なのに核拡散防止条約の締結もしない。日本国民の責務と矜持をドブに捨てる行為だ。矜持なき国は亡びる。その意味で現在の政府は亡国政府とだと言って差し支えない。」・・・

「チーム・バチスタ・・・」シリーズは読んでいないのですが、未読でも登場人物達の”立ち位置”は充分理解出来ました。

文庫本の帯に記載された以下の文章が本書の全てかも知れません。

「近い将来、また襲ってくるであろう新たな感染症に対しても、本書はまたとない警告の書となるはずだ」

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「コンビニ兄弟」(町田そのこ)

九州だけに展開するコンビニチェーン「テンダネス」。その名物店「門司港こがね村店」を舞台とした物語です。老若男女を虜にする”胡散臭い”フェロモン連発の店長と、常連客とのコミュニケーション。それぞれ悩みを抱えた常連客達の「憩いの場」となり、「希望の場所」にもなっていきます。

中でもフェロモン店長の兄で”なんでも屋”ツギの言葉が心に染みます。

・・・「親が死んだとしても、腹は減るぞ。旨さを感じられないときは、どっかおかしくなっているときだ。美味しく食わねえと食いモンに失礼だろう」・・・

・・・「成功したひとはみんな言ってる。どんなことも、続けられなきゃどうしようもない。その年まで報われなくても続けられたってだけで、才能って呼んでいいんじゃないの?」・・・

高齢化社会の中で”コンビニの在り方”を描いた社会派小説と言っても過言ではないのではないでしょうか?。

こんなコンビニあれば毎日通いたいですね。

本作は「コンビニ兄弟2」として第二弾が書籍化されていますが、最後には第三弾への布石が描かれていますので、次回作に期待したいです。