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「総理の夫」(原田マハ)

42歳の若さで女性初の総理大臣に選出された相馬凛子と、妻を支える事を決意した鳥類学者の夫:日和(ひより)が、妻の奮闘の日々を、後世に遺すべく日記に綴る物語。

昨年秋に映画されましたが、以下は映画化決定の際の原田マハさんのコメント。

「なぜ日本の総理は当たり前のように男性なのか?それをフィクションで覆してみたかった。凛子は私の理想そのもので、彼女を支える夫・日和は何があっても妻を信じ、陰ながら守り抜く。本作は政界を舞台にした、信じ合い支え合う夫婦愛の物語である。」

このコメントにすべて集約されている様です。

凛子のポリシーは「すべての国民が明日への希望を持てる社会」を実現する事。その為に、”パンドラの箱”の「消費税率の再引き上げ」を掲げながらも圧倒的な国民の支持率を上げていきます。それは国民目線だからなんですね。年初の施政方針演説で国民に向かって語りかけます。

「あなたのところへやってきた年は、これから、どんな年になりそうですか。それが、誰にとっても心弾む、希望あふれる、平和な年であってほしい。幸せな年であってほしい。国政を預かる立場となったいま、私は、そればかりを願っています。」

そんな凛子は連立与党の重鎮:原久朗(はらくろう)の陰謀もあり総辞職の噂が流れます。しかし国民は凛子総理へ期待します。

・・・国民は、バカじゃありませんから。このままじゃいけないことくらい、わかります。相馬総理が一緒に乗り越えようよ、って言ってくれるなら、私たち、乗り越えなくちゃって思えるはずです。・・・

原田さんの作品ではドラマ化された「本日は、お日柄もよく」もスピーチライターとして政治をテーマとした作品ではありましたが、本作への”布石”だったような気がしてなりません。

読み終わった後で映画も見ましたが、あらためて現状の日本の”閉塞感”を感じさせられましたね。今の現状に、国民がどれだけ満足しているのか?。

相馬凛子待望論、是非世論を盛り上げたいですね。

政治に携わっている人、これから政治を目指す人に読んでほしい一冊です。

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「まぐだら屋のマリヤ」(原田マハ)

東京の老舗料亭で修行をしていた紫紋(しもん)。料亭で起こった事件に機に、人生の終わりの地を求めて彷徨い、海岸線沿いの村「尽果(つきはて)」に辿り着きます。崖っぷちに立つ小屋「まぐだら屋」でマリアと出会った事で、紫紋の人生が変わっていきます。

紫紋、マリアの他にも過去になんらかの”罪”を冒して絶望の中で辿り着いた尽果の「まぐだら屋」はそんな人達を温かく迎えてくれます。

・・・死んで楽になるくらいなら、生きて苦しみなさい。苦しみ抜いて、生きなさい。それがあんたにできる唯一の償いなんだ。・・・

これが本作のテーマなのかも知れませんね。

タイトルからもわかる通り、宗教的な側面もある本作ですが、ページをめくっていく毎に切なく悲しくなってきます。そして最後の真実を目の当たりにすると、救われたような気がしました。

”生き方”を描いた作品としては、以前読んで投稿した「生きるぼくら」と近い世界観かも知れませんね。

「生きる意味」を感じさせる壮大なテーマだけに、じっくりと消化していきたい一冊です。