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「母の待つ里」(浅田次郎)

「ふるさとを、あなたへ」のDMに誘われて旅する定年間近の男女3人の物語。人生に疲れ果てた3人を繋ぐのは、初めて会う母。囲炉裏端に並ぶ手料理と、昔噺がなんとも不思議な物語。

田舎を持たない人の”里帰り”は、一泊二日50万円と高額なサービスでもあり、ちょっと変わった”テーマパークのアトラクション”として懐疑的に参加する3人も、次第に母と暮らす時間を過ごすことによって、これからの人生を見つめ直していきます。最後まで交わることのない3人の物語ですが、最後は・・・・。

浅田次郎さんの作品は、時代物や任侠物と何冊か読んでいますが、こうしたファンタジー?作品も絶品です。

帰る場所(田舎)を持つ人も持たない人も、心に染みる一冊になっている気がします。

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「大連合」(堂場俊一)

高校野球をテーマにした作品。

新潟成南高校野球部員を乗せたバスが高速道路で横転。軽症で済んだエース里田。監督のパワハラが発覚して部員が激減した強豪・鳥屋野高校のキャプテン尾沢。中学でバッテリーを組んでいた二人は、両校で「連合チーム」を結成し夏の甲子園を目指します。

少子化で野球人口の減少が叫ばれている昨今。部員すら集まらずに大会に参加出来ないチームも多いらしいです。現に高校野球の県大会予選では2~3校の連合チームは多くなっている様です。

そんな中で本作は「大人に裏切られた少年」と「夢を諦めきれない少年」の友情と葛藤の物語となっていて、一機に読み進められました。

今回初めて堂場俊一さんの本を手に取りましたが、他にも高校野球やMLBをテーマにした作品もたくさんあるみたいなので、少しずつ触れていきたいと思います。

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『銀座「四宝堂」文房具店Ⅲ』(上田健次)

どこかミステリアスな青年、宝田硯(けん)が店主を務める文具店を舞台とした作品の第三作目。
前作同様に実在の万年筆、フィールドノート、ボールペンなどをテーマとした、心温まるエピソードが5編収録されています。
登場人物達を繋ぐ文具の素晴らしさと出会いに読みながら感謝です。
こんなデジタルな時代だからこそ、アナログな文具に触れてみたくなります。
本書で紹介されている文具は現在も量販店や事務機屋で購入できるみたいです。
とは言っても、昔ながらの文房具屋さんは見かけなくなりましたね。

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「お帰り キネマの神様」(原田マハ)

映画への情熱と家族の再生を描いた原田マハさんの自伝的小説「キネマの神様」。
山田洋次監督の手で原作に大きく手が加えられた映画「キネマの神様」。
映画に感銘を受けて原田マハさんが自らノベライズ版として発表したのが本作となります。
私の場合は原作読んだ後で、映画を見させてもらい、その後本作を手にしたのですが一貫して流れていたのは”映画への愛”です。

”人生でわからないことがあったら、映画を観ろ。答えはぜんぶ、映画の中にある”
”しんどいことがいっぱいあるだろうけど、それが人生ってもんだからな。人生は映画じゃないから。都合よくカットはかからないんだ”
映画を愛した原田さんと山田監督の素晴らしいコラボレーションとなった一冊です。
オリジナルから入るのも映画から入るのも、両方楽しめます。

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「口福のレシピ」(原田ひ香)

“昭和と令和 隠し味がつなぐ感動の家族小説”と文庫本の帯に書かれた一冊。
「三人屋」「ランチ酒」と食をテーマとした作品も多い原田さん。
本作にも”セロリの炒め物”、”鯛の骨酒”等々たくさんの料理が登場しますが、物語の大きなテーマとなってるのが”豚肉の生姜焼き(ポークジンジャー)”です。
西洋料理が珍しかった昭和初期の少女と、現在は料理研究家として活躍する女性の物語が重なり合っていきます。
多少の謎解きやドキドキもありつつ、読後に心地良い”余韻”に浸れる一冊でした。
料理を作るのが好きな人や食べるのが好きな人にもお勧めしたい一冊です。
 

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「夜明けのすべて」(瀬尾まいこ)

PMS(月経前症候群)で感情を抑えられない女性と、パニック障害になり生きがいも気力も失った男性の二人の物語。
恋人でも友情でもない”同志”のような気持ちが芽生えた二人の物語は、周囲の人々を知らず知らずのうちに巻き込みながら、”心にやさしい物語”として展開していきます。
決して器用じゃない二人が、この世界(現代)で必死に生きようと助け合いながら暮らしている姿は、一つの”光”の様な気がします。
瀬尾まいこさんの作品は「そしてバトンは渡された」「戸村飯店 青春100連発」「傑作はまだ」と手にしたのは4冊目でしたが、いずれも心温まる物語で、本作も期待以上でした。

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「古本食堂」(原田ひ香)

神田神保町にある小さい古書店が舞台とした物語。
文豪や著名人の文献(本)とともに、ビーフカレーやピロシキ、カレーパン等々、近隣の名店の料理が紹介されています。
亡き兄から「鷹島古書店」を引き継いで、北海道帯広から上京した珊瑚(さんご)と珊瑚の親戚で国文科の大学生の美希喜(みきき)を中心として物語が進んでいきます。
仕事に悩む出版会社勤務の営業マンや、ちょっと問題のある作家の卵、そして珊瑚の「恋バナ」まで、ほかほか温かいストーリー展開はさすが原田さんですね。
そして何より、古本屋街の風情と料理の数々は温かくて、神田神保町を訪れたいと思いますね。
来年には続編が刊行予定との事ですので、次作も期待したいと思います。

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「コンビニ人間」(村田沙耶香)

コンビニバイト歴18年、彼氏なしの36歳が主人公の物語。
日々コンビニ飯を食べ、コンビニ店員である時のみ世界の歯車になれている主人公のもとに、婚活目的の新入り男性が登場する事から物語が動き出します。
第155回芥川賞で話題となった作品でもあり、文庫本化が気になっていた作品です。

読み始めてすぐに「これはコンビニをテーマにしたお仕事小説じゃないな」って思い知らされました。
コンビニ店員の仕事事情も所々に散りばめられているんですけれど、人間の多様性や「普通の意味」を考えさせられる問題作ですね。
つい最近読んだ、朝井リョウさんの「正欲」とは違い”怖さ”を感じた作品でした。

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「ファミリーツリー」(小川糸)

父のいとこにあたる少女に恋をした少年と、あたたかく見守る大人たちの物語。
信州を舞台とした作品で、思わず旅に出たくなる風景描写。
小川糸さんの作品では鎌倉や瀬戸内を舞台としたものもあり、その風景描写も素晴らしいのですが、今回の信州も旅したくなりましたね。
「生命のつながり」「家族のあり方」をテーマとした作品ではありますが、純粋な「恋愛小説」としても楽しめる一冊となっています。

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「ぎょらん」(町田そのこ)

人が死ぬ際に残す珠と噂される「ぎょらん」をめぐる7編の連作集。
ある理由で都市伝説めいたこの珠の真相を調べ続ける、地方都市の葬儀会社に勤める元引きこもり青年・朱鷺を中心として「ぎょらん」にまつわるストーリーを展開していきます。
人生の最後にあらわれる「ぎょらん」を通して、”命に対する贖罪”や”死者への後悔”、そして残された者の”生”への葛藤。
何度も読み返すことでその時々の想いが変わる作品の様な気がします。
各編を読んでいて様々な事を考えさせられる一冊でした。