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「風のマジム」(原田マハ)

主人公は伊波まじむ二十八歳。大手通信会社の派遣社員として働いています。そんな彼女の運命を変えた社内ベンチャー募集の告知。郷土沖縄のサトウキビでラム酒を造る事業を提案して、夢を実現させる物語です。

初めて”ラム酒”を口にして「おいしい」と言うまじむに、口の悪い?おばあが言います。

・・・あたりまえさ。風が育てた酒なんだから。まじむ。お前も、育っていけ。いいことも悪いことも、全部、風に吹かれれば、何とかなるさ・・・

”風が育てた酒”この言葉は本作のキーワードになっていて、作中何度も登場します。離島の空港で飛行機を降りた時の風、サトウキビ畑で吹く風など、タイトルにある通り、風の描写も素敵に描かれています。何度も”この風にふかれてみたい”と思いながらページを進めていきました

そうしてもう一つのキーワード「マジム」も多く登場します。沖縄のお国言葉で真心の意味との事。「真心こめて」「真心の酒」。

本作は実話をもとにして描かれているとの事で、巻末に原田さんのあとがきが掲載されています。

・・・笑って泣いて怒って、ときに挫折して苦い経験をして、それでようやくかけがえのない何かを得る。まったく人生、甘くない。だけど結構悪くない。そういう女性の人生を、いつか書いてみたいと思った・・・

夢見る女性への応援歌(エール)なのですね。