文庫本の帯にはこんなコメントが
・・・『そして、バトンは渡された』につづく、ちょっとズレた父とすこやかな息子の「はじめまして」の物語
瀬尾まいこさんの「そして、バトンは渡された」は、3人の父親と娘、そして義母の物語でしたが、今回は父と息子です。
50歳のそこそこ売れている引きこもり作家と、突然やってきた生まれてから一度も会っていない25歳の息子の物語。
若い頃に学生時代の友人から誘われて参加した「飲み会」の席で「長所は見た目だけの空っぽな女」と一夜を共にした主人公。
三か月後に家にやってきた彼女は「妊娠した」「とりあえず、私は産むわ」と告げます。
主人公は女の主張通り養育費として毎月10万円を欠かさず振り込み、その2~3日度に「10万円受け取りました」とだけ書かれたメモと、子どもの写真が送られてくるのです。
孤独に慣れ切った50歳の主人公と息子の生活は当初全く嚙み合いませんが、しだいに二人の生活が変わり始めていきます。
そして「何故に息子は突然、会った事のない父親を訪ねてきて、同居生活を始めたのか?。」物語の最後に判明します。
瀬尾まいこさんの作品は「そして、バトンは渡された」「戸村飯店 青春100連発」と、読了したのは今回で3作品目となります。共通しているのは、登場人物に「悪い人」がいないって事ですね。みんな個性豊かな「愛されキャラクター」で描かれています。
今回の作品で特にお気に入りのシーン(セリフ)が秋祭りの古本市に主人公が参加して際に聞かされた老人たちの何気ない言葉。
・・・持ち込まれた本は辞書やガイドブックや最近の文庫本までで多岐にわたる。その反面、手にしてもらえるのは、料理本やエッセイ、恋愛ものや推理ものなど、読みやすい本ばかりだ。
「年取ったら難しい本読まなくなるなあ」
「そうそう。登場人物が多いと誰が誰か忘れるんだよ」
「わざわざ重い話を自分の時間に読むの、もったいないじゃない。」・・・
まさに私も同感です。
決してテーマが重い軽いじゃないんですが、読み終わった後の「後味」が良い作品に巡り合うと嬉しくなります。そして、周囲に紹介して感動や思いを共有していきたくなります。
この本もそんな一冊です。