原田マハさんの「生きるぼくら」を読了。
いじめから、ひきこもりとなった24歳の主人公「麻生人生」は母と二人暮らし。
・・・あなたはあなたの人生を、これからも好きなように生きていってください。・・・
便箋にそうしたためた文字と今年の年賀状の束を残して、頼りにしていた母親が突然いなくなるところから物語がスタートします。その年賀状の束の中に
・・・もう一度会えますように。私の命が、あるうちに・・・
と書かれた祖母からの年賀状をみつけて、祖母のマーサさんが住む長野県蓼科へ向かいます。
蓼科の自然と人間に触れながら成長していく一年間の物語です。
文庫本の表紙に描かれているのが、日本画家東山魁夷さんの「緑響く」。
マーサばあちゃんが人生たちに「あなたに見せたい風景が、ここにあるの」と言って連れてきたのが御射鹿池。「緑響く」のモチーフとなった場所です。
・・・人生の目の前に現れたもの。それは静まり返った小さな湖だった。冬の日差しを照り返し、近くの小高い山の姿を逆さまに映して、静かに広がる湖面、清潔な青空が、そのまま大地に下りてきたようだ・・・。
この表現はキュレーターとして数々の芸術作品に触れてきた、原田マハさんならでは表現なのかも知れない。本作をきっかけにして、本年4月長野県信濃美術館にて「緑響く」を鑑賞。絵画の前で30分程過ごしてきました。さすがに御射鹿池までは足を延ばせませんでしたが、是非とも機会を作りたいと思います。その他にも本作は田園風景や山々の風景描写が素晴らしいです。これも「旅人 原田マハ」さんの本領発揮ですかね。
また「米作り」をテーマにしている事で、忘れかけられている「日本の原風景」を表している作品でもあります。
ここ数年、映像化作品の多い原田マハさんの作品ですが、是非ともこの作品をドラマ・映画で見たいと思わされた一冊でした。
こんな時代だからこそ「生きる意味」を考えさせられました。